瀬戸内海に浮かぶ生口島が、世界でも名の知れた存在となっているのには理由があります。あの「アマン」リゾートの創始者、エイドリアン・ゼッカ氏が開業した「Azumi Setoda」があるからです。風情あふれる日本旅館のよさと、世界レベルのおもてなしが同居する唯一無二の宿の魅力を、さまざまな角度からお伝えします。【2025年1月時点情報】
Text:Shigekazu Ohno (lefthands)
瀬戸内しまなみ海道を通って訪ねる魅惑の島と宿
瀬戸内海に浮かぶ生口島。その名をまだ聞いたことがないという人のために記しますが、島があるのは瀬戸内しまなみ海道沿い。幾つもの橋を介して、広島県尾道市と愛媛県今治市の間に点在する島々を渡るのは、そこでくらしを営む人びとばかりではありません。多島美と呼ばれる瀬戸内海ならではの絶景を楽しみながら、島々を自転車で巡るサイクリストたちが、国内外から多く訪れているのです。


それぞれ個性的な島々が存在する中で、生口島の特徴はといえば、レモンの生産量が日本一であることと、「島ごと美術館」アートプロジェクトによって、島の至るところに現代アート作品が点在していることが挙げられます。山寺から海を見下ろすような、懐かしい日本の風景に出合える島でありながら、さらに名産品であるレモンを用いたさまざまなスイーツを出す店を巡り、現代アート鑑賞を楽しむこともできるとあって、サイクリスト以外にも多くの人びとを惹きつけています。

もちろん、瀬戸内しまなみ海道は自転車だけでなくクルマで渡るのにも素晴らしい道だから、ドライブ好きにもおすすめできます。新幹線+レンタカーの旅なら、東京や名古屋からでもハードルは高くありません。
Azumi Setodaという世界でも唯一無二の宿へ
島を取材している最中、ゆったりと流れる島のリゾート時間に身を委ねるような、いかにも“大人旅”を楽しんでいるかのような人たちに出くわしました。自転車で一周できるような小さい島だから、時と場所を変えて何度かすれ違った末に、どちらからともなく挨拶を交わすことに。海辺で語り合い、カフェでのんびり読書を楽しんでいた彼らが、そののち、おそらくはサンセットビーチで水平線に沈む夕陽を眺めてから戻ってきた場所。それは、世界でもここ生口島にしかない特別な宿でした。
Azumi Setodaは、瀬戸田港から耕三寺へと続く参道としてのしおまち商店街沿いに、世界にその名を知られるリゾートブランド「アマン」の創始者、エイドリアン・ゼッカ氏が開業した新ブランドの旅館です。もともとは島の豪商、堀内家のものであった築140年の邸宅をリノベーションし、グローバルな視点から再解釈のなされたモダンな和の空間に仕立てています。


街の景観に溶け込む、瓦屋根の外観はかつてのままだから、エントランスをくぐり、ロビーにつながる吹き抜けのダイニングルームを仰ぎ見たときは、嬉しい驚きの感覚に捉われました。そこに広がるのは、建設当時の梁を活かしたことによるタイムレスな美を宿した洗練空間。世界の本物を知る、ゼッカ氏のフィルターを通して表現された“世界基準の日本旅館”の姿でした。「土地に根差した文化や、そこにくらす人びととのつながりを享受できる宿をつくる」という、ゼッカ氏がAzumiブランドに込めた哲学の片鱗に、早くも触れたような心地がありました。


Azumi Setodaで味わう瀬戸内の食
このダイニングルームで供されるのは、近隣50km圏内で仕入れる新鮮な海と山の幸を用いたおまかせのコース料理。カウンターの四周を囲むように席が設けられた空間は、あたかも美食体験のための舞台といった雰囲気があり、そこに身を置くだけで気分が高揚するように感じます。
ヘッドシェフを務める秋田絢也氏は、フランス修行時代にミシュランガイド三つ星を持つ「ル・クロ・デ・サンス」でスーシェフを務めた経験も持つ敏腕シェフであり、宿の空間同様、グローバルな感覚と日本の美意識を融合させた料理に腕を振るいます。
旬の野菜や魚、選りすぐった肉を用いた「この土地ならでは」の料理の中でも、多くのリピーターが楽しみにしている、秋田シェフのいわばシグネチャー料理となっているのは、生口島産の人参を皮や葉の部分まで余すところなく使用した一品。塩漬け、乾燥、燻製といったソーセージづくりの手法を応用したもので、まるで畑の恵みをぎゅっと凝縮したかのような濃厚な味わいが楽しめます。

食事の際は、堀内家から受け継いだという貴重なアンティーク食器の数々にもご注目を。地酒やワインなど、ジャンルを超えたセレクションがユニークなアルコールペアリングも人気です。「堀内家の朝ごはん」をテーマにした滋味豊かな朝食も、新たな一日を始めるための元気を、五感を通じて与えてくれるような素晴らしい内容となっています。

ちなみにダイニングルームのある母屋2階には、ソファを並べたラウンジスペースがあり、滞在中は中庭を眺めながら、コーヒー片手にゆっくりと過ごすことができます。すぐ横にあるギャラリースペースには、堀内家由来の収蔵品が展示されており、かつて海運業で名を馳せたという同家の歴史に想いを馳せるのも一興でしょう。

やすらぎの客室空間と魅力あふれる風呂

美しい中庭越しに射し入る柔らかな光に満たされた館内には、50〜70m2の広さを誇る客室が全22室あります。いずれも坪庭やバルコニーによって、趣ある風情と開放感を演出しながら、外からの視線を遮る巧者な設計によってプライバシーが確保されており、滞在中は心身ともにリラックスして過ごすことができます。

杉や檜など、ほんのりと芳香を放つ天然の木材でしつらえられた室内は、癒しと温もりを感じさせます。障子と呼応するかのような白を基調とした色遣いは、伝統的な日本旅館と比べてより明るくモダンな印象を与え、気分も晴れやかにしてくれます。


部屋ごとに、誰に気兼ねすることなく入浴が楽しめる檜風呂が付いているのも大きな魅力。でも、せっかく古き良き日本の空気を漂わせるこの島に滞在するなら、部屋風呂だけでなく、銭湯にもでかけてみることをおすすめします。

実は、宿の向かいにある別棟「yubune」は、ライブラリーやラウンジもあるモダンな銭湯宿。Azumi Setodaの宿泊客は、自由に利用できます。モザイクタイルで島の情景を描いた風呂の壁面は、どこか懐かしさを感じさせつつもスタイリッシュで、一見の価値があります。サウナも併設する、至れり尽くせりの施設となっています。

LEXUSのBEVに対応する充電施設を新規設置
自然豊かなこの島で、綿々と続く歴史に触れてこそ考えさせられるのが、環境問題です。子どもたちの世代も、驚きと発見に満ちたドライブ旅が楽しめるように――そう願うなら、CO2を排出しないBEV(電気自動車)は、積極的に検討したい新たな選択肢のひとつといえるでしょう。
Azumi Setodaは、瀬戸内しまなみ海道を巡り、生口島を目指すBEVドライバーをサポートするために、レクサス充電ステーションを新たに設置。この類稀なデスティネーションで過ごす“大人旅”を、ぜひLEXUSのBEVオーナーにも体験してほしいものです。
このホテルの魅力
- 広島県・生口島にその地の豪商であった堀内家の邸宅を受け継ぎ、リノベーションした旅館。貴重な建築意匠を継承しつつ、客室は現代的なくつろぎの空間に設計。
- お食事は瀬戸内の野菜を主役に、フレンチ料理を堀内家御当主から受け継いだ器を愛でながらいただける。
- 客室は杉、檜、福光石などの天然素材を活かし、数寄屋造りの趣を取り入れた心地のよい造り。
- 客室に檜風呂もあるが、隣接している「yubune」の浴場も滞在客は何度も利用できる。
- 施設が瀬戸内しまなみ海道の中心にあり、サイクリングやレモン狩り、サンセットクルーズなどさまざまなアクティビティも楽しめる。