昨今、旅のスタイルも多様化し、“自分を整える=ウェルネス”を目的にホテルを利用する人も増えてきました。そんなウェルネス滞在の新しい形を提案するのが、2024年に京都・東山に誕生した「シックスセンシズ 京都」です。世界のラグジュアリーホテルの中でも、いち早く「心とからだの調律」をテーマに掲げてきた「シックスセンシズ」。その哲学は、香り、光、音、食、眠りといった五感を穏やかに整え、内なる静けさへ導くことにあります。古都の中心にありながら、深い緑に抱かれた“街の中の森”のような空間で、観光ではなく、自分自身のために過ごす時間を。そんな新しい京都の滞在がここにあります。【2025年10月時点情報】
Photo:Katsuo Takashima
Edit&Text:Misa Yamaji(B.EAT)
このホテルの魅力
- 京都の街中にありながら、ウェルネスとサステナビリティをテーマに「自分と向き合う落ち着いた滞在が可能。
- 質のよい睡眠にフォーカスし、よりよい睡眠のためのグッズや工夫が用意されている。
- スパ、ジムなどのプログラムでも、ゲストの睡眠と健康の質を向上させるサービスが充実。
- 旬の食材や発酵調理を取り入れた野菜中心のメニューで、ゲストのウェルネスに貢献。
ウェルネスを牽引する世界的リゾートブランド
京都へ行く目的は?と聞かれたら真っ先に思い浮かぶのが、“寺社仏閣を巡りながら美味しいものを食べる”という王道の観光でしょう。けれど実はその京都に、心身を整える滞在のためだけにわざわざ訪れたくなる、日本屈指のウェルネスリゾートがあるのをご存知でしょうか。
そのホテルこそが、2024年に開業した「シックスセンシズ 京都」です。
「シックスセンシズ」は1995年にイギリス人のソヌとエヴァのシヴダサニ夫妻により創設された、自然派ラグジュアリー・リゾートブランドです。最初のホテルはモルジブにオープンし、以来、離島や山岳リトリートを中心に展開しています。特徴は、単なるラグジュアリーにとどまらず、ウェルネスとサステナビリティを核に据えたホスピタリティのあり方を再定義しつづけているところにあります。
今や、多くのホテルがそうした“ウェルネス”について力をいれていますが、「シックスセンシズ」は30年も前から取り組んでいる業界のパイオニア。2023年からは、多忙な現代のライフスタイルに合わせたウェルネスを提供するため、都市型ホテルも展開。京都はその都市型ホテルのアジア第一号として開業しました。
香りから入る非日常の世界
「シックスセンシズ 京都」は一般的なラグジュアリーホテルと一線を画す、心身を癒すさまざまなサービスやプログラムが充実しています。
実際にロビーに一歩足を踏み入れると、さっきまでのせわしない外の世界とまるで違う時間が流れていることに驚くでしょう。
目の前には、青々とした中庭の木々が大きな窓いっぱいに広がり、一瞬で森の中のリゾートに来たかのよう。ふわりと漂う「鞍馬山の雨上がりの朝」をイメージして調香された和の香りに包まれると、ここが京都だということを感じます。
京都の「身を清める」文化に倣い、香を用いたウェルカム・リチュアルはチェックイン時の儀式。香木の老舗〈天香堂〉によるオリジナルブレンドのお香を手のひらで温めて静かに深く香りを吸い込めば、日頃せわしなく使っている脳のノイズがすっとなくなるような気に。このひとつの体験が、からだを緩める非日常へのスイッチとなるのです。
客室はまるで森のリゾート
ここでのおすすめの滞在の仕方は、ホテルに籠って心身と向き合うこと。アクティブに観光にでかけることはいったん忘れてください。
約42〜238平方メートルまでの多様な客室は、木と和紙のテクスチャーが穏やかな陰影をつくるナチュラルなインテリア。大きめのテーブルやソファも設置され、心地よさと機能性を兼ね備えています。眺望は「中庭」「豊国神社の庭」「京都市街(樹冠・屋根・寺社の見える景観)」に面しており、京都の街中とは思えないような静けさに包まれています。
おすすめは、中庭に面している「デラックス ガーデン(キング/ツイン)」。大きな窓の間近にある木々の緑が目に優しく、広々としたバルコニーが贅沢。ここのデイベッドは、風を感じながらいつまでも寝ころんでいたいほどの気持ちよさ。いったん部屋に入ったら、もうどこにもでかけたくなくなります。
長期滞在や海外の方に人気の“専用の日本庭園”や独立したリビングがある「プレミア スイート ガーデン(キング/ツイン)」は、京都らしさを感じられる造りです。
自然と叶う心身と向き合う滞在
部屋の造りもさることながら、このホテルに籠りたくなる最大の理由は、滞在の随所でウェルネスにフォーカスしたサービスやメニューがあることです。
例えば現代人にとって重要な睡眠にフォーカスし、「シックスセンシズ」ブランド全体で「Sleep With Six Senses」という取り組みをしています。
具体的には睡眠専門医マイケル・J・ブレウス博士ほか、世界的に有名な専門家たちと協力しながら快適な安眠環境を考えた英国「Naturalmat」社のオーガニックマットレスや、快眠のためのリカバリーパジャマを用意。睡眠トラッカーの貸し出しや、サポートアプリの案内、ターンダウン時のスリープアロマのサービスなども受けられます。
スパ施設も街中にあるホテルとは思えないほどの充実ぶり。伝統的なヒーリングと最先端の科学技術を使ったユニークなプログラムが多種用意されています。
最近の人気は、睡眠改善のためのスリーププログラム(有料)。これは2日間自分に向き合い、睡眠パターンの改善、エネルギー レベルの回復、ストレス解消、持続可能な睡眠習慣の確立を目指していくものです。
施術は、まずは自分の状態を知るウェルネス・スクリーニングから。ここでは専用の機器を使い、自分の状態をスクリーニング。約30の主要バイオマーカーと10のインジケーターでチェックし、ストレスの状態から血流のよしあしまでを数値化。プロのアドバイスで現在のからだの状態を知ったのち、「ドリームキャッチャー」という施術でからだをリラックスさせます。
これはシンギングボールという音のヒーリングから始まり、不眠傾向に対する研究が進む成分CBD配合のボディオイルで背中・首・肩の緊張を深部からマッサージするメニュー。副交感神経を優位に整え、快適な睡眠を誘います。
滞在中は「バイオハック リカバリー ラウンジ」(有料)で疲労回復のための機器を使ったり、ヨガのレッスン(有料)やサウナや温浴施設でくつろいだり、プールで泳いだりしながら過ごすことで、乱れた体内リズムを整えていきます。
ほかにも、日本のホテルに2カ所しかないというワッツ(水中で行うボディワーク)専用のプールも完備。自身のコンディションに合わせ、さまざまな体験ができるのはこのホテルの大きな魅力です。
リラックスしたら、からだに優しい食事を
食の面でも、からだによいものは徹底されています。シックスセンシズの食哲学“Eat With Six Senses”は、旬の食材を大切にし、発酵などの手法を取りいれ、野菜を中心とする考え方がベースにあります。
シーズナルダイニング「Sekki」では、古来より日本の農作業の目安となっていた二十四節気に着目し、その時期に旬を迎える食材を活かした料理が味わえます。
食材はできるだけオーガニックのものにこだわり、ホテル内で育てているハーブなどもたっぷり使用。鮮度のいい野菜を中心とした料理はどれ活き活きとした野菜の香りと味を感じます。薪と炭火を熱源とするジョスパーオーブンで、ガリッと香り高く焼いた肉や魚も人気です。
アラカルトで注文できるので、スパのあとに“軽く済ませる”など、お腹の具合に合わせた選択肢が多いのも嬉しいところ。
ちなみに、部屋に常備されている野菜のチップスやポップコーンなどもすべてキッチンチームで手作りされています。
2泊3日の滞在がおすすめ
たっぷりと自己と向き合い、ホテルを存分に楽しむならば2泊3日以上の滞在をぜひ。チェックアウトの朝、ロビーから外に出るときには、空気がまるで違って感じられるでしょう。
森のリゾートから街へ―。街中で味わえる、パスポートがいらない非日常の旅には、少し贅沢に過ごす価値があるはずです。