箱根の中でも、100年以上の歴史を持つ別荘地・強羅。その土地に宿る精神性を大切にして「ホテルインディゴ箱根強羅」は2020年に誕生しました。全室に温泉を備えた客室をはじめ、館内にはこの地の文化や記憶を映す意匠がちりばめられています。川の音に耳を傾けながら湯に浸かり、地元の食材を薪火で仕上げた料理を味わう滞在は、日常の慌ただしさをリセットしてくれるでしょう。季節ごとに表情を変える自然の景観美や箱根の文化体験に触れる旅の拠点としてもおすすめです。【2025年8月時点情報】
Photo:Akiko Fukuchi
Edit:Misa Yamaji(B.EAT)
地域と調和する温泉ホテル
再構築された地域の文化を感じ、宿泊を通じて“その場所らしさ”に触れる――。そんな体験を提案するのが、「ホテルインディゴ」というブランドです。
2020年に開業した「ホテルインディゴ箱根強羅」は、日本国内で初めて“温泉地”に進出したインディゴブランドの拠点。温泉、食、自然、歴史、それらが交差する箱根・強羅の魅力をホテルのあらゆる場所に取り込んだ、「地域と共鳴するホテル」として誕生しました。

箱根・強羅には、自然の恵みとともに独自に発展した歴史があります。
強羅がリゾート地として注目されたのは約100年前。
明治から大正期にかけて、三井物産の益田鈍翁が鉄道を敷き、避暑地として別荘地の分譲を開始したことがきっかけです。そこから皇族の方々や著名人に愛され、高原でありながらさまざまな文化的な行事も発展していきました。
その一例が毎年8月に行われる「大文字焼」でしょう。これは、もともと避暑で訪れた皇族の方々を楽しませる目的で始まったといわれます。
今も地域の夏の風物詩として受け継がれており、この季節に強羅を訪れる旅人たちを楽しませています。
また、忘れてはならないのが種類豊富で良質な温泉です。強羅温泉は、明治時代に早雲山からの引き湯で温泉開発が始まり、現在では46もの源泉が湧き出ています。

温泉と歴史―。そんな強羅の個性が「ホテルインディゴ箱根強羅」にはギュッと詰まっています。
まず、温泉。強羅らしい温泉カルチャーを伝えるべく、100室ある客室すべてに温泉を引いています。さらに足湯やサーマルスプリングなど温泉施設を設置。
ここまでさまざまな形で温泉を楽しめる外資系ホテルはかなり珍しいといえるでしょう。

また、別荘地として長い歴史を持つ静かな強羅の雰囲気に馴染むよう、ホテル全体のデザインには、地域文化を映す意匠が丁寧に組み込まれています。
例えばゲストを迎えるロビー。京都の古民家から譲り受けた建具や梁を再利用することで、日本らしい美しさを表現するとともに、空間に温かみをもたらしています。

強羅らしさを宿す客室
客室は「デラックスキング」、「デラックスツイン」、「コーナーキング」「スイート」の4種類。広さは標準タイプで約37~38平方メートル、スイートルームでは最大77平方メートルの広さを誇ります。
部屋からの景色は、古きよき強羅を感じる街並みと川を眺める「リバーサイド」と、深い森を間近に感じる「ヒルサイド」の2タイプ。いずれも強羅ならではの雰囲気を味わうことができます。

最上級のプレミアスイートは全4室。
すべてリバーサイドで、温泉が満たされた半露天風呂のあるテラスにダブルシンクとゆったりとした造りが特徴です。客室のインテリアには歌川広重の「東海道五十三次」をモチーフとした壁紙と組子細工の意匠が施されており、さりげなく箱根らしさを醸し出しています。


この部屋の魅力はなんといっても、好きな時間に開放的な半露天風呂で温泉が楽しめること。
「ホテルインディゴ箱根強羅」が引いている源泉は、強羅温泉のひとつである宮城野温泉。源泉が高温のため加水して各客室に供給されますが、肌あたりが柔らかいお湯はいつまでも入っていたくなるほどの心地よさです。

静かな雰囲気を重視するなら、内風呂付きのヒルサイドの「デラックスキング」または「デラックスツイン」のお部屋がおすすめです。
目の前は深い森。マイナスイオンを感じながらゆっくりと浸かる温泉もまた格別です。
ヒルサイドの部屋は、ユニークな写真の壁紙がインテリアのアクセント。「島写真館」に残る昭和初期に撮影された強羅の風景写真は部屋ごとに変わるので、宿泊のたびに新しい発見があります。訪れるゲストは強羅の地が重ねてきた時代の流れに包まれるような気持ちになるでしょう。

多彩に楽しむ温泉体験
箱根の旅館文化と、ホテルの快適さが融合しているのもユニークな点です。
一般的にホテルでは館内着でゲストがパブリックスペースでくつろぐことはないですが、「ホテルインディゴ箱根強羅」はホテルオリジナルの浴衣で、ホテル内ならどこでもそのまま出かけられます。
部屋で温泉に入ったら、浴衣に着替えてそのまま川沿いの足湯や、サーマルスプリングへ。旅の友と楽しむ温泉三昧は、このホテルならではの醍醐味です。

ちなみに“サーマルスプリング”とは、水着着用の混浴スタイルで利用できる温浴施設のこと。通常の温泉と違い、カップルや家族で一緒に楽しめます。
「ホテルインディゴ箱根強羅」のサーマルスプリングは内湯のため、天候を問わず一年中楽しめるのもいいところ。
水流がある歩ける深湯・浅湯・寝湯のほか、LEDスクリーンに映し出される箱根や富士山の風景を楽しめるジャグジーなど多様な湯船が揃っているため、運動やリラックスなど目的に合わせて過ごすことが可能。それぞれの楽しみ方を見つけられる新しい温泉のカタチがここにはあります。
薪火が生む、記憶に残るひと皿
滞在中の食事は、レストラン「リバーサイド・キッチン&バー」で。
箱根伝統の組子細工を組み合わせた意匠が施された天井と、光あふれる大きな窓が印象的な店内は、リラックス感あふれるムードに満ちています。

窓の外には、春は桜、夏は新緑、秋は紅葉、冬は静寂とそのときどきによって表情を変える強羅の景色。
そんな季節の移ろいは、料理からも感じることができます。

レストランのテーマは「炎と水」。箱根の大文字焼(炎)とホテルのそばを流れる早川(水)という、土地に根ざす自然の要素を空間と料理の両方で表現しています。
そのテーマどおり、シグネチャーディッシュはオープンキッチンの中央で赤々と燃える薪火を使った炎の料理。薪の火力と香りを活かし、旬の素材のうまみを最大限に引き出した品々がメニューに並びます。

食材も“ネイバーフッド”がコンセプト。沼津や小田原などの漁港から水揚げされる地魚から、足柄牛、近隣県などから届く野菜を中心とした食材は、なんといっても鮮度が抜群。
それらの山海の美味を、フランス料理の名店で経験を重ねてきた総料理長の坂本 啓氏が確かな技術で調理していきます。

中でも注目すべきは、絶妙な焼き加減の骨付きトマホークの薪火焼グリルやこだわりの詰まったブイヤベース。
骨付きの和牛は、薪火の前につきっきりになりながら、火の入り方を細かく調整。肉汁を中に閉じ込め、ジューシーに焼き上げます。骨から取ったジュのソース、塩、かぼす胡椒、レフォールなどとともに、肉のうまみと香りを存分に感じながら豪快に食べてほしい逸品。

ブイヤベースは、金目鯛、オマールエビ、ホタテなどを一度薪火で焼き上げ、うまみを引き出してからスープに仕立てるというスタイル。
さまざまな魚のあらで取った出汁が凝縮されたスープは、濃厚かつ洗練された一皿。まさにフランス料理の技法を駆使し、素材のよさを引き出した坂本氏ならではの料理です。

地域とつながる楽しみも
ホテルでゆっくりとした時間を過ごすのもよいですが、「ホテルインディゴ箱根強羅」は「地域を探索するための拠点」として滞在するのがおすすめです。そのときに頼りたいのは、“ネイバーフッド・ホスト”と名付けられたスタッフたち。彼らは自らの体験に基づいた地域の魅力を提案し、ゲストの旅を彩る発見へと導く存在となってくれます。
文化や自然、歴史、そして温泉。そのすべてが融合してきたこの土地で、「ホテルインディゴ箱根強羅」は、地域とともにあるホテルのあり方を静かに体現しています。旅を重ねるほどに、また別の季節に戻ってきたくなる――そんなホテルなのです。
このホテルの魅力
- 自然・文化・歴史とつながる体験型ステイ。“ネイバーフッド・ホスト”と呼ばれるスタッフが、強羅の文化や自然を紹介し、地域に根差した体験をサポート。四季折々の風景や地元行事にも触れられる。
- 100室ある客室すべてが天然温泉の風呂付き。さらに、足湯やサーマルスプリングなど多様な温泉体験ができる。
- 薪火料理が堪能できるレストラン。「リバーサイド・キッチン&バー」では、近隣の地魚や足柄牛、野菜を中心とした鮮度のよい食材を使った料理を楽しめる。
- 地域文化が息づくインテリアと空間。京都の古民家から譲り受けた建具や梁、歌川広重の浮世絵をモチーフにした壁紙や組子細工など、日本の伝統美と現代のモダンデザインが融合。滞在するだけで「強羅らしさ」を感じられる演出が散りばめられている。