2023年6月に福岡に誕生した「ザ・リッツ・カールトン福岡」は、グローバルなVIPの宿泊にも対応できる品格と規模を備えた福岡初のラグジュアリーホテルとして話題となった。18階以上にある天空のホテルでは、絶景を望む心地よい部屋に加え、美食の面でも力が入る。“食都”福岡が誇る最上級ホテルの魅力をお届けしよう。
Photo:Katsushi Takakura
Text & Edit:Misa Yamaji (B.EAT)
街の中心に位置する天空のホテル
九州の中心都市・福岡に誕生した「ザ・リッツ・カールトン福岡」。2023年6月、世界のVIPを迎える五ツ星クラスホテルの初開業は大きなニュースとなった。
実は、今まで福岡にサミットなどの国際的な会合を招致するにふさわしい国際水準のホテルがほとんどなかった、と聞いて意外に思う人も多いかもしれない。
実際、福岡市は2019年に日本で初めて開催されたG20首脳会議の誘致に声を上げていたが落選。理由のひとつに「各国首脳や海外のVIP招致にふさわしい高級ホテルがない」ということが挙げられた。
そして開催地には、VIPを受け入れられるホテルが充実している大阪市に決まったという苦い経験を持つ。こうしたことからも、「ザ・リッツ・カールトン福岡」の開業は官民上げて力を入れたものだったことが窺えるだろう。
「ザ・リッツ・カールトン福岡」が建つのは福岡市の中心地にある「福岡大名ガーデンシティ」内。地下鉄の最寄り駅からは徒歩で5分。空港からはクルマで15分とアクセス抜群の場所だ。
ホテルが入るのは、この建物の18階から上階。申し分のない便利な立地にありながら、一歩中に入れば静寂の世界が広がる。
18階のロビーに到着し館内を歩けば、窓の外に広がるコンパクトな天神の街並みや海・山を眺めることができる。
インテリアのテーマは「織」。織物の縦糸と横糸が織りなす一枚の布のように、このホテルで福岡の文化や歴史を繋ぐ、という意味が込められているという。そのテーマに沿うように、館内には竹や布、木などのナチュラルな素材で垂直と水平のデザインが効果的にあしらわれている。
「ザ・ロビー・ラウンジ」でチェックイン後のウェルカムティーを飲んでひと息つけば、立地とデザインを通じて福岡の文化や特徴を自然と感じることができるだろう。
国際的な賓客をもてなすのに、まさにふさわしい空間であることは間違いない。
魅力的かつ多彩なビューがある客室
ゲストルームとスイートルームは合計167室。19階から23階に位置し、「天空のホテル」といいたくなってしまうような絶景を誇る。
その眺望もさまざまなバリエーションがある。福岡の街並みを見渡す「福岡スカイライン」、大濠公園を正面に望む「パークビュー」、博多湾とその先にポッカリと浮かぶ能古島を遠く望む「ベイビュー」などスイートも含めると14タイプ。スイートルームは20室。188㎡を誇る「ザ・リッツ・カールトン スイート」は1泊250万円からと、価格もしつらえも東京の最上級ホテルにもひけを取らない豪華さだ。
客室は全室50m2以上から。スタンダードな部屋でもゆっくりとくつろげる十分な広さだ。
別府特産の竹細工を使った網竹から着想を得た引き戸などをポイントにしたナチュラルトーンのインテリアが心地よい。スケルトンのバスルームの壁にはモンテカルメログラニット(花崗岩の一種)があしらわれ、シンプルなインテリアにモダンなアクセントを添えている。
室内のアメニティにも細やかな上質さへのこだわりが感じられる。備え付けられたナイトウェアは英国「デレク・ローズ」社のもの。まるで空気を纏っただけかのような軽やかな着心地に感動すること間違いないだろう。ドリンクバーには「茅野舎」の飲む出汁パックが置いてあるのも気が利いている。
食都「福岡」の名に恥じぬ、充実の食体験
さて、「ザ・リッツ・カールトン福岡」に宿泊するなら、クラブアクセス付きの部屋がおすすめだ。
このクラブラウンジ「ザ・リッツ・カールトン クラブ」の食が“食都・福岡”随一のホテルの矜持を見るような充実ぶり。朝食・軽食・アフタヌーンティー・ディナー前のオードブル、おやすみ前のコーディアルと、時間帯ごとに1日5回のフードプレゼンテーションが提供されている。
チェックイン後はぜひアフタヌーンティーを。セイボリーからケーキ、スコーンまでのフルラインアップで満足感が高い。また紅茶などはもちろんのこと、全時間帯メニューにあるアルコールがフリーフロー状態でオーダーできるので、シャンパンと合わせて楽しむのもいいだろう。
夕刻に振る舞われるオードブルのメイン料理は種類豊富で、軽いディナーにもなりそうな内容。ランチのタイミングとなる軽食でも、水炊きやモツ鍋など九州お馴染みの料理が日替わりでメニューに登場するのも楽しい。
とはいえ、クラブランジでお腹いっぱいになってしまうのはもったいない。というのも、ホテル内には4つのレストランと2つのバーがあり、九州ならではのさまざまな美味が堪能できるのだ。
モダンウエスタン料理の「Viridis」に日本料理の「幻珠」、アフタヌーンティーやスイーツを楽しめるカフェ「Diva」、オイスターや炭火焼料理が楽しめるバー「Bay」、軽食やスイーツを終日楽しめる「ザ・ロビーラウンジ & バー」など、いずれも魅力的だが、会席、鮨、鉄板焼とさまざまなスタイルで福岡の美味を味わうことができる「幻珠」は特に人気だという。
この日は「幻珠」の会席をチョイス。会席料理長・中島弘貴氏は、京都「和久傳」で経験を積んだのち、東京の人気日本料理店「銀座ふじやま」で2番手を勤めた人物だ。
ここでは、中島氏が培ってきた確かな技術を使い、四季折々の九州地産の食材を鮮やかに料理したコースがいただける。
そして、このホテルにステイしたら忘れてはならないのがバー「Bay」だ。
非常に人気のバーだが、宿泊者なら予約が可能。外来ゲストにかかるチャージも必要ない。
エレベーターでバーに向かうと、目に入るのは真っ暗な空間に浮かび上がる船のエンジンルームのようなオブジェ。スタッフに誘導されてバーに向かうと、そこは対照的な光にあふれた煌びやかな世界が広がる。
行き交う船をイメージしたというインテリアは、ガス灯の炎が天井に反射し、夕日に染まった玄界灘の水面を表している。甲板ならぬテラスには、ゆったりとしたテーブル席があり、天気がよい日は特に人気のプラチナシートだ。
カウンター席の奥には、隠れ家のような雰囲気のラウンジエリアが。奥には予約必須の個室が2つあり、落ち着いて飲みたい人にはこちらもおすすめ。
ここで飲みたいのはシーズナルカクテル。全8種類のなかからバーテンダーと話をして好みのものをチョイス。お腹に余裕があるのであれば、炭火で焼き上げる“焼き鳥”のメニューから「糸島豚バラ肉」をつまみにするのもいい。
ちなみに、「焼き鳥」といったら鳥に限らず“串に刺して焼いたもの”を指すのが九州流。こちらでは、糸島豚のバラ肉を炭火で焼き、チミチュリソースをかけたものや、阿蘇自然豚サルシッチャソーセージのグリルなど、通常の「焼き鳥」の概念を超えた料理が登場する。注文してから炭火で焼くので出来立てをお酒に合わせられるのも嬉しい。
DJの音楽と、オリジナリティあふれるカクテルと食。クールな雰囲気に浸る夜はまるで香港かマカオのプライベートバーのような高揚感がある。
天空のプールで非日常を味わう
日々、からだのメンテナンスを気にするVIPにも極上の空間が用意されている。
博多湾の眺望を眺められる25mのプールは、プールの水面と窓の向こうの海と空が一体化し、まるで博多湾に浮かんでいるような気分になる。
室内なのに、海外のリゾートホテルのインフィニティプールのような開放感があるのだ。
プールのほかにヴァイタリティプールがあるのも嬉しいポイント。プールでしっかりと泳いだあとは、ゆっくりと寝転びながら水圧に任せてからだをほぐすことができる。
そのほか男女ともにミストサウナとドライサウナもあるので、スパエリアでは長時間すごす余裕をもって訪れてほしい。
いずれにしても「ザ・リッツ・カールトン福岡」は、ホテルのなかだけで九州の魅力とグローバルレベルの極上の時間を同時に味わうことができる。ただ“泊まる”だけではあまりにももったいない。ホテルのなかから一歩もでずに、福岡が誇るラグジュアリーホテルを楽しみつくす余裕をもって宿泊したい。
このホテルの魅力
- 2023年6月、福岡市の中心部の複合施設「福岡大名ガーデンシティ」内に福岡初のラグジュアリーホテルとして開業。最寄り駅から徒歩5分、空港からも車で15分と好アクセス。
- ホテルは18階以上にあり、一歩中に入ると静寂の世界が広がる。ロビーや客室からは、福岡の街並みや海・山を一望できる「天空のホテル」だ。
- 全167室の客室は50m2以上あり、自然光を取り入れた広々とした空間が特徴。ナチュラルトーンのインテリアや上質なアメニティが快適な滞在を約束。
- クラブラウンジ「ザ・リッツ・カールトン クラブ」は、とりわけ食が充実。朝食・軽食・アフタヌーンティー・ディナー前のオードブル、おやすみ前のコーディアルと、1日5回のフードプレゼンテーションを実施。
- 4つのレストランと2つのバーがあり、モダンウエスタン料理、日本料理、炭火焼、カフェメニューと幅広いジャンルを網羅。会席、鮨、鉄板焼とさまざまなスタイルで福岡の美味を味わえる「幻珠」、そしてDJの音楽とシーズナルカクテルを楽しめる「バー」は特に人気が高い。
- 最上階には25mのプールは開放感たっぷり。プールの水面と窓の奥の海と空が一体化した景色は、まるで海外リゾートのインフィニティプールのよう。ラグジュアリーな非日常の体験が待っている。