大阪万博開催を2025年に控え、新しいホテルも多く誕生している大阪。そんな中でも、開業13年目を迎え、国内外の富裕層に根強い人気を誇っているのが「セント レジス ホテル 大阪」です。その人気の秘密は、1904年ニューヨークで創業したホテルに根付く歴史と、セントレジスの代名詞、バトラーサービスにあります。総支配人のアンディ・ノー氏に知ればぐんとホテル滞在が魅力的になる、ホテルでのおすすめの過ごし方をお伺いしました。
Photo:Shin Ebisu
Text & Edit:Misa Yamaji (B.EAT)
アメリカ社交界流のもてなしと、歴史が息づくホテル
パーソナルなサービスにエレガントな空気感。セントレジスというホテルブランドの神髄は、約120年前の開業時に遡ると言って良いでしょう。
開業は1904年。オーナーは、ジョン・ジェイコブ・アスター四世という富豪でした。移民であった曽祖父が毛皮の貿易と不動産で成功し、米国屈指の富豪となったアスター家は、ジョンの母親のキャロライン・アスターがアメリカ上流社交界の花形としてひときわ光り輝く存在感を放ち、その名声を揺るぎないものにしていきます。そして、その末息子であるジョン・ジェイコブ・アスター四世は、社交界の人びとのために今までにない贅を極めたホテル「セントレジス」を開業したのです。
社交界の中心にいた人物がニューヨークの一等地に建てたボザール様式のホテルは、当時最新式の電話を全客室に置いたり、各ゲストに専属の執事がつく「バトラーサービス」を取り入れたりと、画期的な手法でセレブリティたちの心を掴みます。
そして創業から約120年経つ今も、「バトラーサービス」をはじめとするフィロソフィーは、全世界の「セントレジス」に受け継がれています。
「セントレジスブランドの魅力は、おっしゃるように歴史的なストーリーテリングにあります。もっとも象徴的なのは、創業時から続くバトラーサービスでしょう」と語るのは、「セント レジス ホテル大阪」の総支配人、アンディ・ノー氏。
バトラーサービスとは、24時間専属の秘書がついてくれるようなサービスです。コンシェルジュと違うのは、よりパーソナルに滞在中の身の周りのことをサポートしてくれることにあります。例えば到着時の荷解きや、アイロン掛けなどのプレスサービス。ホテルから外出している間に部屋を整えてほしいなど、さまざまなことが依頼できるのです。
24時間専属秘書のバトラーがつくホテル
とはいえ、バトラーサービスにどんなことをお願いしたらいいの?と思う方も多いでしょう。
「バトラーサービスの標語は“ARROW ME(おまかせください)”。すべてのお客さまの時間が大切という共通認識のもとに、できるだけゆっくりとお過ごしいただけるように、お手伝いをするのがバトラーの仕事です」とアンディ氏は語ります。
例えば、チェックイン後にスーツケースの荷解きをすべてバトラーにまかせれば、その間にゆっくりとバーで一杯楽しむ時間が生まれます。
さらに、荷解きをお願いしたうえで、“シャツ類はアイロンを、パンツにはプレスをかけて革靴は磨いておいてください”と一言声をかけるだけで、すべてをプロがピシッと揃えてくれるのです。その完璧な仕上がりに感動し、一度依頼した人のほとんどがリピートするというほど。
荷造りも同様に、プロの仕事を感じることができます。衣類はきれいに畳み無駄なく機能的に詰められ、靴は簡易のシューキーパーを入れて薄紙に包んで梱包するなどの細かい配慮がいき渡っています。
こうしたサービスは一度受けるとそのよさがわかるものですが、パーソナルな荷物の整理を他人にお願いするのは気が引ける、という日本人ゲストが多いのだそう。ホテル滞在を有意義なものにするためにも、「滞在中はもちろんのこと、ホテルの予約をした段階から、遠慮せずにバトラーにいろいろと相談してください」とアンディ氏はいいます。
ちなみにセントレジスでは予約の段階から各ゲストに合わせてバトラーが準備をします。そのため、レストランの予約や車の手配、客室の冷蔵庫に用意しておいてほしい飲み物、観光におすすめの場所や不安なことなどを宿泊前からバトラーに相談することができるのです。
ホテル滞在にかかわる細かなことは、自分でやらずにプロにまかせる。そうしてできた時間で滞在を楽しむ。それこそがバトラーサービスを利用する極意。忙しいビジネスマンにこそ、嬉しいサービスであることは間違いないでしょう。
セントレジスのレガシーを感じるバーへ
そしてアンディ氏が「セントレジスの特別なレガシーを感じてほしい」とおすすめするのがバーです。
「セントレジス・ニューヨーク」のバー「キングコールバー」は、格式高い社交の場としてセレブリティたちに愛されてきました。伝説的アーティストのマックスフィールド・パリッシュによるバーに描かれた壁画「Old King Cole」が名前の由来とあり、各国のセントレジスホテルのバーにはその国ごとのオリジナリティあふれる絵画があります。
大阪のバーカウンターの後ろには、洛中洛外図を大阪にあてはめ、現代に解釈した大きな絵画が。深い海の色を思わせるミッドナイトブルーの壁の一面に、浮き上がるようにして存在感を放つ絵画は、よく見ると「セント レジス ホテル 大阪」をはじめ、大阪城や南蛮船などがにぎやかに描かれており、眺めるだけでも飽きません。
「キングコールバー」はカクテル「ブラッディマリー」発祥の地としても有名です。しかし、今セントレジスでは、そのカクテルを「レッドスナッパー」という名でオンメニュー。そこにはこんなストーリーが。
1934年、「キングコールバー」のバーテンダーのフェルナンド・ペティオが作った、ウォッカとトマトジュースベースのカクテル「ブラッディマリー」は、大きな評判になり各地に広まっていきます。しかし“Bloody=血”というイメージがエレガントではないと、当時のオーナーの意向で “レッドスナッパー”へ名前を変更。名称が変わった後も、バーの名物カクテルとして愛されつづけているのです。
「この『レッドスナッパー』はオリジナルの味として受け継がれているのですが、それとは別に、世界各国のセントレジスホテルにはそれぞれ独自の『ブラッディマリー』があります。大阪では『ショーグンマリー』という名前でお出ししています」とアンディ氏。
本家本元の「レッドスナッパー」と「ショーグンマリー」の飲み比べは、ここならではの楽しみ方といえそうです。
また、バーでのリチュアル(儀式)も見逃せません。日が沈みかけて夜になるマジックアワーには、シャンパンサーベラージュをして開栓したシャンパンをその場にいる人びとに振る舞うというイブニング・リチュアルが毎晩行われています。
こうしたリチュアルは、創業者のアスター家がアメリカ社交界の人びとをもてなした慣習の名残です。ほかにも、このマジックアワーをバイオレットアワーと名づけ、日が暮れた後に紫色のマティーニをトローリーで振る舞う“バイオレットアワー”も毎晩行われています。
古き良きアメリカン・ソサエティのエレガンスに触れながら、ホテルでの時間を楽しむことができるのもセントレジスならではでしょう。
リニューアルしたレストランでイタリア料理を楽しむ
ディナーはぜひ、2023年9月に改装を終えたイタリア料理「ラ ベデュータ」へ。
天井が高く、大きなシャンデリアが飾られるドラマティックな店内は、オレンジを基調とした鮮やかなカラーを絨毯やソファの張地などに取り入れ、イタリアの輝く太陽を彷彿させる温かみもあります。
ここでいただけるのは、西日本を中心とした日本の食材で作る、進化したイタリア伝統料理。
旅が好きだという料理長の吉田道昭氏の発想から、月替わりでイタリアの20州のひとつをフィーチャーし、日本のエッセンスを入れながら表現するコースが人気です。
関西のハブとなる都市・大阪を拠点に関西を旅する
最後に、アンディ氏は「大阪は地理的に関西のハブになる都市。大阪だけでなく京都、神戸、奈良などへのアクセスがとてもいいという魅力がありますね。食都といわれるように、ローカルフードからガストロノミックなものまで楽しめるのも魅力です。海外の方だけでなく、日本の方にも改めてその魅力に触れる旅に出てほしいですね」と語ってくれました。
アメリカ上流階級の流れを汲む優雅な「セント レジス ホテル 大阪」に滞在して、エネルギッシュな大阪を拠点とした旅をする。そんなコントラストを味わうのもまた、魅力的です。
このホテルの魅力
- 開業13年目を迎え、国内外の富裕層に根強い人気を誇る「セント レジス ホテル 大阪」。1904年ニューヨークで創業した「セントレジス・ニューヨーク」の「バトラーサービス」をはじめとするフィロソフィーが継承されている。
- バトラーサービスとは、24時間専属の秘書がついてくれるようなサービス。到着時の荷解きや、アイロン掛けなど、コンシェルジュよりパーソナルに滞在中の身の周りのことをサポートしてくれる。
- グランドデラックスプレミア(コーナールーム)には、窓際にはソファ席、仕事がしやすいデスクもある。
- ディナーはぜひ、2023年9月に改装を終えたイタリア料理「ラ ベデュータ」へ。西日本を中心とした日本の食材で作る、進化したイタリア伝統料理が楽しめる。
- バーは、セントレジスのレガシーを感じられる場所。バーカウンターの後ろには、洛中洛外図を大阪にあてはめ、現代に解釈した大きな絵画が。ミッドナイトブルーの壁から浮かび上がるような存在感を放つ。